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貸屋住まいを始めてからトラブル続き。何かある!と思って相談してみると……

トラブル

昨年、家の建て替えに伴って一時的に貸家住まいをしたのですが、それを境に不可解な災難に遭遇するようになってしまいました。そもそも、引っ越し先の貸家の様子が変でした。そこは地元の不動産屋を通じて契約した一軒家だったのですが、転居を終えたばかりの翌日の朝、2階の一室を使うことになった長女が突然、おかしなことを言い出したのです。「ママ、私の部屋、オバケが出るみたいやねんけど」朝食のテーブルでいきなりそう口走ったので、最初は悪い冗談だと思ってたしなめました。しかし、長女の目はいたって真剣でした。「昨日の夜中にそろそろ寝ようと思うて、カーテンを締め直してん。そうしたら、窓の外の真っ暗闇に人の顔みたいなのが浮いていて、こっちがギャッて叫んだらパッと消えて……」と、薄気味の悪い話を始めました。

どうしてそれが出た時に他の家族を起こさなかったのかと聞くと、霊と目があった瞬間に金縛りに遭い、そのままベッドに倒れ込んで、再び気が付くとすでに朝だったとのこと。夫は「急に環境が変わったせいで、おかしな夢でも見たのだろう」と笑っていましたが、私は胸騒ぎを覚えました。というのも、前日の引っ越しの際、近隣の家々の態度が妙によそよそしかったのが気に掛かっていたからです。こちらが「あそこの家へ仮住まいする者です。しばらくよろしくお願いします」と挨拶したところ、「ああ、そうなん?」とぶっきらぼうに言い放ち、すぐに玄関の戸を閉められるということが度重なったのです。その時は、よそ者を嫌う地域なのかな?くらいにしか思わなかったのですが……。

それから数日は何事もなく過ぎたのですが、翌週の月曜日の朝、再び長女が「幽霊が出た」と騒ぎました。おまけに高校生の長男まで「夜中に廊下を歩き回る足音を聞いた」と言い出し、さすがに気のせいで済ますわけにもいかなくなり、その日の夜から私と夫も2階の部屋で寝ることにしました。子供達が主張する窓の外の顔や足音の真偽を、自分達の目と耳で確認しようと考えたのです。そしてその結果、私達夫婦も奇怪な現象に遭遇してしまいました。長女のように直接、霊の姿を見たというわけではないのですが、廊下を軋ませて渡る家族以外の足音ははっきりと聞こえました。

結局、その家には4ヶ月半ほど住み、ようやく建て直した我が家へ戻れたのですが、直後に夫が体調を崩して会社を休みがちになり、続けて私も駅の階段を踏み外して転倒、足を骨折するという事態に見舞われました。さらに長男が自転車の事故で、頭を縫う大怪我を負ったのはそれから2週間後のこと。ほぼ時を同じくして、長女も病院の検診で不調が見つかって、しばらく入院ということになってしまいました。

そんなわけで、さすがにこれは何かあると直感し、以前、近所付き合いの悩みをご相談したことがあった天啓の里々葉先生にお話しを聞いていただいたのですが、開口一番、「ああ、これは……早急に除霊が必要ですね」と絞り出すような声で言われ、一挙に背筋が凍りつきました。私達家族が仮住まいをした家屋に相当の問題があり、その悪影響を受けて今の災難が起きているとのことでした。

「問題というのは、具体的にどんなことなんでしょうか?」と恐る恐る訊ねると、「最初に住んだ家族が全員、不審死を遂げているはずです」と即座に言われました。「調べてみれば分かると思いますが、そこに住んでいた老若男女合わせて5人ほどの人間が続けて事故死または病死しています。その原因はこの土地の祟りです。昔、井戸があった場所がきちんと供養されないまま埋め立てられて、そこに家屋が建っている格好になっているんですよ」「つまり、井戸の祟りということですか?」「ええ、そうです。今、あなた方が仮住まいされていた家の中を遠隔霊視しているのですが、家の土台の真下に井戸の跡が残っていて、そこから立ちのぼる瘴気(しょうき)が家屋の内部に充満しています。そして、その瘴気に吸い寄せられる形で、付近の浮遊霊や祟り霊の類が大量に集結しているんです。こんな家に住んでいたら霊を見たり、その音が聞こえたりするのは当たり前です。4ヶ月しかいなかったのは不幸中の幸いで、もし長く住んでいたらご家族全員の命が根こそぎ奪われていたかも知れませんよ」。恐ろしい言葉に絶句し、慌てて対処法をお聞きすると、ひとまずは応急措置として電話越しに悪霊の動きを封じる祈祷をするので、後はできるだけ早いうちにお寺か神社で本式のお祓いを受けるように、と指示されました。その後、数分に渡ってお経のような呪文(イタコ流の特殊な呪術とお聞きしました)を唱えてくださったのですが、それまで重かった両肩がとたんに軽くなったのを今も覚えています。

その週の土曜日、夫の実家の檀那寺のツテをたどって、本格的な加持祈祷をしてくれる隣県のお寺さんへ伺いました。事情を説明するとすぐに護摩を焚いてくれて、家族揃って入念なお祓いを受けて帰宅。念のため、その日のうちに里々葉先生にも確認を取ったところ「きちんと除霊されています」と言われ、ようやく安堵できました。その後は何事も起きておりません。

近所に住む事情通の奥さんから、私達が住んだ貸家のことも聞き出すことができました。里々葉先生に指摘された通り、今から20年前、当時その家に住んでいた5人家族が、わずか半年のうちに立て続けに亡くなるという悲劇があったそうです。いずれも死因は事故死や自殺で、テレビや新聞で報道される犯罪事件などではなかったため、昔から住んでいる地元民しか知らない話だと……。自分が住んでいる土地について何も知らないというのは、じつはとても恐ろしいことなのだと悟りました。

(磯辺夏帆子さん 40歳 大阪府池田市)